瞳先生と健太君たちとの話
算数の問題2

先生が健太君たちに問題を出しました。



健太君がぶつぶつ言う。「うちもそうだが、いつも兄貴は威張っていて、自分だけ自転車に乗って、楽をするんだ。」先生はいつものことなので、健太君のつぶやきを無視します。幸子さんが言います。「なんだか、イメージがわかないわ。」健太君も仲間を得たような気分になって、「そうだ。そうだ。元々、片方だけ自転車に乗るなんて、卑怯だ。」先生は健太君の声を無視して、幸子さんをほめます。「幸子さん、そうよ。これだけだとイメージがわかないわよね。幸子さん、とても良いところに気が付きましたね。立派よ。それなら、どうすれば、イメージがわくでしょう。」

先生は教室中を見渡します。幸子さんはすでに下を向いて、答えられないことを示しています。健太君は顔を上げていますが、たぶん答えはちんぷんかんぷんでしょう。優君がにこやかな笑みを見せて、手を挙げています。先生は腹の中で、「優君しかいないか。仕方がないな。」とつぶやきながら、「それじゃあ。優君に前に出てきて、黒板で、説明してもらいましょう。」優は得意そうに鼻をびくつかせ、黒板に突進しました。

優君は黒板に一本の線を引きます。
     


すれ違った場所をP点とします。
すれ違った時間をA君が家から出発してa分後とします。
まず、A君とお兄さんのスピードを出します。
A君のスピード:1800m/20分=90m/分・・・分速90mです。
お兄さんのスピード:1800m/12分=150m/分・・・分速150mとなります。A 君とお兄さんのスピードの比は90:150=3:5です。
ですから、P点は家から駅までの距離の3/5の場所、つまり、1800m×3/5=1080m。
時間はA君のスピードで割ればよいので、1080m/90分=12分・・・
つまり12分後となります。ここで勘の鋭い健太君が奇声を発した。「バカ、12分後と言ったら、兄貴はもう家についてら。」あれ、おかしいな。優君も間違いに気づきます。12分後とはお兄さんが家に着いた時間だ。優君は黒板を凝視しながら、心は慌てています。

先生が心の中で、ニンマリしながら、優君をほめます。「答えは間違っているけれど、考え方は素晴らしいわ。優君。」優君は計算のどこが間違ったのか分からずに、先生に助けを求めます。その先生から褒められたので、笑顔になって、席に戻ります。ちらっと健太君を横目で見て、“どうだ。俺は褒められたぞ”と顔で反撃します。先生が幸子さんに聞きます。「幸子さん、どうですか。分かりましたか。」幸子さんは首をよこに振ります。「よくわかりません。」それを見た健太君が逆に優君の方を向いて、おちょくったような顔でやり返します。先生は話します。「優君が間違えたのは、ちょっとしたミスなの。A君とお兄さんのスピード比を3:5にしたのはいいんだけれど、P点は家から駅までの距離を3/5の場所ではなくて、3/(3+5)=3/8の場所にしなければならなかったの。優君の1本線をグラフにするともっと分かりやすくなるわよ。」

先生は優君の書いた横線に縦線を加えて、グラフを描きました。



先生はグラフの説明をします。
「優君はA君とお兄さんのスピードの比から、家からP地点までの距離と駅からP地点までの距離の3:5としました。このグラフでいえば、家からP地点までの距離はA君は1分間に90mで歩き、P地点までa分かかったので、90m*a分と言うことになります。同じように駅からP地点までの距離はお兄さんの速度から、150m*a分になり、家からP地点と駅からP地点までの距離の合計は1800mなので、90m*a分+150m*a分=1800m
となりますね。この式からa分を求めると 1800m/(90m+150m)=7.5分になります。家からP地点までの距離は 90m*7.5(分)=675m になります。
優君の式に当てはめれば、90m*a(分):150m*a(分)= 3:5 なので、家からP地点までの距離は1800m*3/8=675m と言うことになります。優君の考えは正しいですね。」

健太君が言います。「そのグラフつてい奴だと、お兄さんは後ろ向きに進むのかい。」

先生はこのグラフの縦軸を横軸に、横軸を縦軸にしたグラフに書き直します。「このグラフと前のグラフは同じものだけど、こうすれば、お兄さんは前に進むようになるわね。」



先生はグラフの説明をします。
「このグラフは先ほどのグラフと同じものです。でも、こう書き直した方が分かりやすいでしょう。一般的には横軸を時間、縦軸を距離にしたものが多くて、見慣れているからです。」

先生は話を続けます。「これは君たちには、少し難しいかもしれないけれど、グラフにする意味にはもう一つ重要なことがあるんです。それはA君の歩みを示す直線やお兄さんの自転車の動きを示す直線を数式であらわすことができるということなの。」

これは先生の説明です。A君の歩みを示す数式は次のようになります。
 y(距離)=x(時間)×1800m/20分
例えば、この数式で、x(時間)を0にするとy(距離)は0となって、家にいることになります。x(時間)を20分にするとy(距離)は1800mとなって、駅に到着します。
お兄さんの直線を数式化すると次のようになります。
y(距離)=1800m−x(時間)×1800m/12分
この数式のxを0と12分をすると、yの値はそれぞれ、1800mの場所(駅)と0mの場所(家)になります。
さて、P地点と言うのはA君とお兄さんの交差した場所ですから、二人のxとyが同じ値のところです。つまりP地点の値を出すには
 y(距離)=x(時間)×1800m/20分=1800m−x(時間)×1800m/12分
ここでいうyは家からP地点までの距離、xは先ほどのせつめいではa分と言うことになります。では式を解いていきましょう。
X×1800/20=1800−X×1800/12 この式は次のように変換できますね。
1800=X×(90+150) →   X(時間)=1800/240=7.5分
y(距離)=7.5分×1800m/20分=7.5×90=675m
結果は先ほどの答えと一緒だけど、こちらの方が応用は効くわね。

「少し、脱線するけれど」先生が話し続けます。「普通の人はA君のように、同じ速度で歩くことはできないわ。健太君、優君、幸さんたちならば、途中の公園で遊ぶかもしれない。でも、そんな複雑な動きもすべて数式であらわすことはできるの。だから、それらの動きの交点も計算できることになる。もちろん、宇宙空間のロケットや台風の動きなんかになると複雑すぎて、人間の手に負えないので、スーパーコンピューターに計算してもらっているのよ。」

健太君が手をあげます。「その絵じゃ。左の駅と右の駅じゃ、場所が違うじゃないか。同じ駅ではないぞ。」先生は微笑みます。「そうなの、同じ駅じゃないの。この駅はA君が家から出発した20分後の駅なの。20分という短い時間だから、見た目は同じように見えるけど、微妙に違っているはずなの。例えば、この間に子供が落書きをしているかもしれないし、駅だから、何人もの人たちが改札を通っていったはずよ。それがグラフの右上と左上の駅の違いなの。横軸が時間と言うのは、そのような意味があるのね。」優君は興味深げに目を輝かせて聞いています。健太君はそれでも懐疑的です。幸子さんは分からないままのようです。先生だけが満足そうに教室中を見渡します。健太君はまだぶつぶつ言っています。「もともと、違う場所の二人が同時に出発するなんて、ありえないや。うちのお兄ちゃんはもっとずるをして、約束しても、早く出るんだ。だからいつも先について、勝ち誇ったような顔をするんだ。」

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