瞳先生と健太君たちとの話
算数の問題1

瞳先生が健太君をはじめ、生徒たちに算数の問題を出した。



「健太君。分かりますか。」
「わからねえ。そのA君と言うのはおらたちと同い年だろう。どんなに頑張っても、時速6キロなんてで歩けねえ。」
「これは算数の問題で、仮定の話です。」
「そんなことを言っても、歩けねえものは歩けねえ。」瞳先生にとって、健太君の言葉はいつものことなので、笑って、答えを求めることをあきらめます。

瞳先生はここで幸子さんを指します。「幸子さんはどうですか。」「時速が6キロと4キロなんだから、半分の5キロじゃないかしら。」先生はニンマリします。思わず、幸子さんを抱き締めて、頬ずりをして、まだ文句を言い続けている健太には足蹴りでもしたい気分です。

瞳先生は教室を見渡す。優等生の優君がにこやかな顔で、こちらを見て、手を挙げています。「それじゃあ。優君にやってもらいましょう。」「また、優か。」健太君が舌打ちをします。優君が答えます。「答えは簡単です。仮に、」「また、仮か。」健太君が言う。優君はこれを無視して、話を続けます。「仮に、A君の家と学校との距離が24キロあったとします。」「24キロもあるのか。すげえ。優は24キロも歩けるのか。」優君はムッとするが続けます。「すると、A君は行きは24km/6kmで4時間かかります。同じように、帰りは24km/4kmで6時間かかります。合計で10時間ですから、往復の距離を10時間で割れば、平均時速が出ます。往復の距離は24km*2=48km、48キロなので、48km/10時間=4.8kmで、時速は4.8キロになります。」

「わからねえ。大体優の家と学校までは24キロもねえ。優。自分の家と学校までの距離で、やってみろ。」優が答える。「私の家と学校までは4キロくらいだ。やり方は一緒だから、難しくはないはずだ。4キロを6キロで割れば・・」ここで、健太君が口を挟む。「優。お前はのろまのドン亀だから、時速6キロなんかで歩けんねえ。正確に言え。」優君が悔しくて泣き出す。瞳先生はオロロする。健太君はそれに構わず続ける。「優はせいぜい時速1キロだ。優の家は平地だから、行きも帰りも1キロだ。平均時速は1キロじゃないか。頭の悪い俺でもわからあ。」

瞳先生がたまりかねて、健太君に話します。「仮定の話と言うのは、世の中ではよく使うことなの。今回の問題では、A君の家から学校までの距離が何キロでも、答えは同じだから、優君は一番、計算しやすい距離を仮定にしたのね。なぜ、同じかと言うと、分かりやすいように、A君の家から学校までの距離がbキロとして計算式に当てはめると次のようになって、分子のbで分母のbを割れば1となって、先生は黒板に次のような計算式を書きます。



結局、bをどのような数値にしても答えは同じなの。だから、優君は分かりやすい24キロにしたのね。だから、優君の家と学校との距離が1キロでも答えは一緒なの。」


健太君はぶつぶつ言います。「でも、優は時速6キロなんてで、あるけねえ。」
先生が困ったように言います。
「それでは問題になりませんねえ。それじゃあ、健太君のお父さんは足が速いかしら。」「うちのおとうは足が速いぞ。」「それじゃあ、時速6キロでも歩けるわね。」「うん、歩けるぞ。」「それじゃあ、この問題のA君を健太君のお父さんにしましょう。健太君のお父さんが家から会社まで、行きは時速6キロ、帰りは時速4キロで歩きます。では平均時速はいくらでしょう。健太君、やってみて。」

「わからねえ。」「どうして、分からないのよ。優君が詳しく説明してくれたでしょう。」「分からないのは、先生の方だぜ。うちの親父は行きはまっすぐに会社に行くんだが、帰りには、途中の居酒屋に寄って、酒を飲みだすと、帰りがいつになるか分からないんだぜ。」

先生はあきらめて、次の問題を出します。



「この問題は分かるかしら。健太君。」「そのA君と言うのは俺だな。足は誰にも負けんねえ。Bは幸子で、Cはドン亀の優だな。そうなると、下手をすれば、50メートル以上の差になるんじゃないか。なんといっても、優の足は遅い。」

「何を言っているんですか。幸子さんはどうですか。」「10メートルずつ、差ができるのですから、20メートルじゃないかしら。」再び、先生は目が潤む。思わず、幸子さんを抱き締めて、頬ずりして、健太には足蹴りでもしたい気分になる。

「それでは優君に正解を言ってもらいましょう。」「えへん。健太は足だけは速いが、馬鹿だ。」「バカとは何だ。」「バカだからバカと言った。そうでなければ、この問題を解いてみろ。」「だから50メートル以上だと答えたじゃないか。正解だ。」「バカ。バカ答えだ。」

先生が鎮まるように言う。優が答える。「まず、A君が100メートルを走った時に、B君は10メートル後方、つまり90メートルの位置にいることになります。つまり、B君の走力はA君の90%と言うことです。同じくC君はB君の90%の走力と言うことです。ここで3人が一斉に100メートル走をしたとしたら、A君がゴールをしたときに、B君は10メートル後方の90メートルの位置に、さらに、C君はB君の90%の走力なので、90メートルの90%(90m*0.9=81m)で後方の81メートルの位置にいることになります。つまり、A君とC君との位置はそれぞれ100メートルと81メートルなので、その差は(100m-81m=19m)で19メートルと言うことになります。この結果は、3人走ではなく、A君とC君の二人走でも同じ結果となるはずです。」ここで優君は偉そうにえへんと咳払いをする。「なぜ、最後の10メートルを走る間に、B君とC君との差が10メートルに開いたかと言えば、B君が90メートルの位置から100メートルの位置まで走る間に、C君との差がさらに1メートル開いたからです。えへん。」

先生は恍惚な目で優君を見る。「素晴らしいですね。正解です。分かりましたか。健太君。」「健太のバカ。分かったか。」優君が追い打ちをかける。「おかしいな。優とだったら、50メートル以上の差がつくんだが、19メートルしか差がつかないなんて。そんなわけないや。」

職員室に帰ってきた先生がつぶやく「優君のひらめきはすばらしいわ。優君の知恵と健太君の機知、どっちが社会で役に立つかはわからないけど、健太君も実務に長けた人になることだけは間違いなさそうね。でも、私は幸子さんが好き。とてもかわいいお嫁さんになるに違いないわ。」


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