家計のキャッシュフロー表


第11章 教育費
2018年問題と言われているものの中に、教育費に関するものがあります。それはこの年から、大学への進学者数が確実に減少していくからです。もちろん、少子高齢化の問題なのですが、子供たちにとっては、大学を選ぶことさえしなければ、必ず、どこかの大学へ入学できるという時代になったのです。ただし、その反面、学生たちの学力は低下するでしょう。これは日本社会にとってはゆゆしき問題です。一方、大学側にとっても、厳しい現実が待っています。大学の淘汰が行われ、幾つかの大学が閉鎖や廃業、倒産という事態に追い込まれるかもしれません。生き残りをかけて、懸命の努力が行われることになります。それは大学ばかりではないでしょう。高校や塾、予備校、さらには中学や小学校、その下の幼稚園や保育園に至るまで、影響は広がるのです。

この危機に、文科省や教育現場はいくつかの対策を立てました。大学間の競争では、すでに多くの大学が地方からの学生を集めるために、地方に受験会場を設置しました。学生を増やすという試みは二つあります。一つはあまり成功したとは言えないのですが、大学院の増設です。文科省の目論見としては、6・3・3・4年の教育機関の延長を図ったのでしょうが、それに見合った職場が確保されませんでした。二つ目は資格制度の拡充です。これも資格を取れば、そこに魅力的な職場が確保されているというのであれば良いのですが、多くはそうではありません。趣味の域を超えることは出来ませんでした。唯一、成功しているのが、昨今の精神福祉介護の分野です。この分野は国や行政が関与しているので、資格が結びつきやすいという側面があります。それに定年退職を向けた高齢者に新たな教育の機会を与えることもできているようです。ただ、これも無理やり行っているので、ある資格を追加取得するために必要なのは、単に1教科なのに、1教科だけとれる大学はありません。大学に入学し、新たに全教科の取直しが必要になるそうです。もちろん、文科省も学生の増加が目的なので、このような理不尽さにも目をつぶります。

一昨年ですか、保育園不足が問題になりました。この背景には日本の労働者不足があります。お母さん方の労働参加が欠かせないという緊急問題がありました。日本の労働人口の減少は深刻です。これを補うのは高齢者と女性の労働参加です。特に女性の参加は結婚即離職、出産即離職という社会慣習を大きく変えなければ実現できません。政府や地方行政はこの保育費の負担軽減ばかりを考えているようですが、女性の社会参画はお金の面も確かにありますが、女性にとっては働くという喜びも大きいのです。それには多数の保育所設備が必要になります。規制の緩和などで、是非、安心できる保育所を多数作ってもらいたいものです。ただ、この傾向は確かだと思いますので、幼稚園や保育園は数を増やし、小学校や中学校、さらには高校や大学は数を減らしていくということになりそうであります。

次にどのような変化が起こりそうかと言えば、2極化です。日本も世界も、格差社会という言葉があるように、教育に今以上にお金をかける層とそうではない層に分かれるようになります。もちろん、お金をかける層は少数で、お金をかけない層の方が多数派です。お金をかけない層のなかからも優秀な人が出てくることは否定しませんし、むしろ、それを期待します。ただ、教育界と言う経済構造の中では一部の人たちに富が集まりそうです。

ところで、私達日本人は、総中流時代から脱して、多様性の時代に入りました。働き方も様々だし、それに合わせて、受ける教育の在り方も様々になるはずです。ですから、本来であれば、お子さんの一人一人の希望に合わせて、教育システムができることが望まれます。教育費のキャッシュフロー表が必要になります。それが家計のキャッシュフロー表作りという私たちがお手伝いするものなのですが、その前提となるのは、社会全体ではこうですよとか。少なくとも、これだけの費用は必要ですとかの指針が必要でしょう。これが本誌の目的でもあります。

教育費はお子さんたちの希望、お子さんの小さいうちは親の考えによって、その負担額は大きく変わります。例えば、「大学(高校)まで進学させたい。」「中学からは私立高校に進ませたい。」「獣医になりたい。」などのイメージする進路で必要な費用は大きく変わります。もちろん、最終的な進路を決めるのはお子さんなので、教育費がいくら必要になるのか、お子様の進路決定の段階で驚かないように日ごろから情報収集されておくことが大切です。ただ、幼稚園や保育園から大学を卒業するまでの費用はばかになりません。ご両親の生涯出費の中でも大きな比重を占めるものとなります。一般的には、少子高齢化が進み、子供の数が減るのですから、教育費も減少すると考えられているのですが、実際には、一人ひとりのお子さんに、高額な教育を施すという傾向が強まって、逆に教育費の増加傾向さえ見られるようになっています。その顕著な例が塾費用です。塾に通う子供の比率が70%を越え、行かない子供が少数派になると親も自分の子を通わせざるを得なくなります。また、女子が主に通っていた短期大学が減少し、多くの女性たちが4年生大学へ通うようになりました。この結果、大学へ進学率は50%を越えているのです。さらに、最近では文科省の推進もあり、大学院への進学を目指す人達も少なくありません。
*教育費は日本人の人生における三大出費のひとつです。平均的な教育費用を記載しますので、キャシュフロー表を作る参考にしてください。




(注)大学生の出費には入学金のほか、親元から離れて暮らす学生の生活費も含みます。また、標準モデルでは奨学金やアルバイト代などの収入もありますので、それらを差し引いた実質的な親の負担分を表記しました。
皆さんが教育費を考える場合には、現在、皆さんが支出されている金額と表で示されている金額とを勘案しながら、将来の支出金額を算出してみてください。

これだけ教育費が高額になると、親が負担するにも限界が出てきます。ですから、大学に通う多くの学生たちは奨学金を利用しています。奨学金の種類には沢山ありますが、多くの場合は、学生が就職した後で、その学生に返済義務をつけているものが多数だと思います。それに、奨学金だけでは足りずに、教育ローンまで設定しているケースもあるくらいです。そこで、私が申しあげたいのは、お子さんと少なくとも大学の費用について、話し合うことです。どこまでを親が見て、どこからは自分で払う。その中には当然、奨学金やローンのように、お子さんが後で支払うべきものも含まれているのです。


トップページに戻る




Y-FP Office Japan by Idea21 Ltd.