家計のキャッシュフロー表


第10章 三大出費の変遷

人生の三大出費の変遷について考えてみましょう。日本で最初の東京オリンピックが開かれ、高度成長時代を迎えようとしていたころ、私たちの経済的な大きな出費は住宅ローンと教育費と生命保険料でした。これを当時三大出費と言いました。このうち、生命保険料については、日本の金融ビックバンにより、大きな変化が起きました。金融ビックバンとは1996年から2001年にかけて行われた金融制度改革のことです。これにより日本の金融界は世界的なグローバル化の波の中を歩み始めることになります。ある意味、それまでの護送船団方式とも呼ばれ、保険料などが横並びの認可方式になっていたものが崩れることになりました。この波は当然、生命保険業界にも及びます。それまでの積立型から掛け捨て型。さらには死亡保険金から医療保険金など、種類も増えて、それぞれの人のニーズに合わせたものに変わりました。もちろん保険料も、保険会社間の競争原理が働きましたから、安くもなっていったのです。こうして、生命保険料は三大出費からは脱落していきました。今の40〜50代の人たちの三大出費は教育費と住宅ローンと老後資金だそうです。

老後資金の必要性ですが、1970〜90年の世代にも、実は存在していたはずです。でも気付かなかったのです。当時の彼らの親は、まだ大家族主義の下にありました。たぶん、長男家族とともに、田舎で暮らしていたのではないでしょうか。暮らし向きも質素なものでしたから、老後不安を感じなかったのです。実の親が老後不安を感じなければ、子供は感じません。そのころでも、将来を見通した人は老後の生活に警鐘を鳴らしていたと思うのですが、私たちの人生と言うものは、限られた人たち、特に親からの強い影響を受けるので、まったく老後資金の必要性を感じないままに、老後に直面してしまったと言えるでしょう。

私たち日本人の多くは戦後の高度成長期に、大家族主義から核家族主義へと。さらに、田舎生活から都会生活へと大きく生活環境を変えました。だからこそ、親の世代では三大出費に入らなかった住宅の取得も必要になったのです。住宅取得費用は老後資金と違います。今、現在必要な資金です。だから気が付くのです。親の代には修繕費だけですんでいたものが都会の高額な住宅取得費用を用意しなければならなくなったのです。そして、多くの人たちは住宅取得に住宅ローンを利用することになります。今は低金利ですが、いわゆるバブル期に買った人たちは、高金利でしたから元本と同程度の額の負担を強いられたのです。住宅ローンが苦しいはずです。でも、この住宅ローンが三大出費と認識するのは、この世代で終わりかもしれません。なぜなら、現在は超低金利時代です。それに、子供の数が多くありません。子供は親の苦しみを見て、住宅取得に悩むかもしれませんが、ふと立ち止まれば、そこに親が買った家があるのです。そこに住めばよいのです。それにこれからの日本は人口の減少時代に入ります。そして都心には建築技術の高まりで、高層住宅が続々と建築されています。普通に考えれば、ちょっと郊外に出れば、安い住宅は幾らでもあるはずです。さらに言えば、インターネットなどの普及で在宅勤務なども、次の世代には普及するはずです。多くの人にとって、住宅取得に困る時代ではなくなっていくはずです。ただ、付言すれば、だれでも手軽に住宅を取得できる環境と言うのは、治安とか、騒音とかの住環境は悪化する危険があります。ですから、それらを回避するために、新たな出費が必要になるかもしれません。

教育費です。1970年代当時、確かに教育費は掛かりました。親の世代の収入も少なかったからかもしれませんが、実感として、大きかったと思います。学費のために大学進学をあきらめた人も多かったのです。親の世代の収入額は各段に増えましたが、それに伴って、教育費も増えていったように思います。授業料自体も値上げされていきましたが、親の世代にはなかった塾などの費用が増えました。大学へ進ませるためにはひとりあたり1000万円を覚悟しなければならない時代ですから、当然三大出費のなかに君臨しているわけです。さて、教育費の将来はどうでしょうか。政府は教育費の無償化などを政策に掲げていますが、財政がひっ迫化している最中、掛け声ほどには実施されるとは思えません。それよりも、将来の子供たちが大学進学に夢を持たなくなることによる出費減少の方が現実的でしょう。インターネットの普及はこの分野でも画期的な改革をもたらすかもしれません。

三大出費に匹敵する形で、新たに登場してきたのは、子供から親まで、だれもが1台持っている携帯やスマホの使用料です。一人あたりは1万円以下かもしれませんが、家族全員の合計すると馬鹿にできません。固定電話であれば一家に一台あればよかったのですが、携帯電話時代では小学生からお年寄りまで、ほとんどの人が持っているように見えます。しかもその費用は毎月同じように出ていくのです。もちろん安価な料金を提供する会社も出てくるでしょうが、こればかりは使い勝ってやら、友人間のやりかたとかに縛られるので、すぐに準三大出費から脱落と言うわけにはいかないようです。

さて、ここまでは一般的な日本人の家庭の三大出費について考えてきました。いわば、政府がその政策に反映させるような情報です。でも、家計のキャッシュフロー表で必要な出費は、それぞれ個人の方の状況です。例えば、私たちの夫婦のように子供のいない家庭やすでに独立してしまった家庭、さらに独身を貫いている方々にとっては、自分の教育費はあっても、子供の教育費はありません。独身者ならば、それに代わって、趣味の旅行費用とか、スポーツジムに通う費用とかが家計の中で重要な地位についているかもしれません。つまり、三大出費と言っても、実は人それぞれ別なのです。ただ、これだけは言っておかなければなりません。1970〜90年の世代が実は存在してはずの老後不安を気付かなかったように、あなたにも気づかなければならないことがあるはずです。その出費が少額であることが予想されるのであれば、ひたすら、今の楽しみに浸っていてもかまいません。けれど、キャッシュフロー表の算出の結果が大きなものであれば、出来るだけ早めに対処しておく方が人生設計のうえでは楽なのです。



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